「シートン〜旅するナチュラリスト〜」シリーズ

チビのころから動物が大好きだった私は、同じくらい本を読むことも好きで、動物の話を読むのが当然大好きでした。たしか、「シートン動物記」は誕生日+小学校入学のお祝いに全集買ってもらったんだっけ。その前の年の誕生日には椋鳩十氏の全集を買ってもらったんだよなあ。『大造じいさんとガン 』は、小学校の国語の教科書にも採用されていたりするので、知っている人も多いかも。マイ・ベスト椋鳩十は『 マヤの一生 』です。…今は、自分の愛犬の最期とダブって読めないと思いますが…。

もうちょっと大きくなったって、「戸川幸夫動物文学」を読みました。『高安犬物語』『オーロラの下で』が特に好きでした。それから「ファーブル昆虫記」も読んで、グールド博士のチンパンジーのお話とかに進みました。懐かしいなあ。この辺は、何時、何回読んでも新鮮な気持ちで読めます。

それで、『高安犬物語』を漫画で読んだことがあって、『高安犬物語』が漫画になるのなら「シートン動物記」だって漫画であってもいいよなあと思ったことがあったのですが、その後、アニメはあっても漫画で目にすることはありませんでした。あったけど出会う機会がなかったのかもしれません。しかし、先日、新聞の文化面の下にちょこっと広告が出ているのを見て、心が躍りました! なんと、『ブランカ』『犬を飼う』の谷口ジロー氏が「シートン動物記」を漫画化している、とのことだったのです。

さっそく近所の本屋さんに足を運んだところ、最新刊の第4章『タラク山の熊王』だけがありました。シートンと言えば『狼王ロボ』×高橋よしひろ氏共に犬の画表現がすばらしい谷川ジロー、なので、是非とも第1章の『狼王ロボ』から読みたかったのですが、我慢できずに第4章を“お持ち帰り”してしまいました。

読み出す前は『タラク山の熊王』ってどんな話だったっけ、と忘れていたっぽいのですが、ケリヤンという猟師の名前、ジャックとジルという小熊の名前などを見たら、するするとストーリーを思い出しました。

やはり谷川氏の画は素晴らしい! 文章で読むのとはまたちがった楽しさを味合わせてくれるものでした。小さなコマの中ではあるのですが、動物たちが実に生き生きとしています。ほんとうはどんなだったのかは誰にもわからないのですが、ほんとうにこうだったんじゃないかと納得するものがありました。

随所に、原作の文章の強さを乗せる構成がまた、良くて。最初、このシリーズの存在を知ったとき、もしかしたら2008年以降の子供は、原作のシートン動物記を読む前にこの漫画を読んでしまう、という子供も居るだろうな、そしたらそれはそれでかわいそうなことかも知れないな、と思ったのです。漫画→原作になってしまったら、やっぱり原作を読んでいるときに漫画の画が思い出されてしまうだろうな、と。原作→漫画だったら、もっともっと自由にイメージを膨らませたり掻き立てたりできただろうに。もしかしたら、漫画を読んで原作を読まないでシートン動物記を読んだ、っていう子も出てくるのかもしれない。でも、この漫画は、原作の言葉の強さや文章の豊かさのようなものを上手く生かす、ということに成功しているように思いました。ところどころ、漫画にしては長く文章を読ませる場面があって、それが、この前後はどんな文章でつながっているんだろう、と、逆に文章を想像させるような感じがあるのです。これなら、漫画を読んでから原作を読んでみようかなと思う子も出てくるかもしれない、そういうパスも悪くはないなと思わせるものがありました。

あと、これ、英訳してもよいのではないかなあと思います。日本の誇るべきメディア漫画の良さを西洋に知ってもらうにはこれほどよいものはないのではと思います。

第4章『タラク山の熊王』は、長いお話でボリュームがあって、1500円。この1冊を一気に読むと、映画を見たような読後感がありました。

表紙を見ただけでもう、わくわくしてしまうこのシリーズ。これからの発刊が楽しみです!

シートン 第1章―旅するナチュラリスト (アクションコミックス)

シートン 第1章―旅するナチュラリスト (アクションコミックス)

シートン 第2章―旅するナチュラリスト (アクションコミックス)

シートン 第2章―旅するナチュラリスト (アクションコミックス)

シートン 第3章 (アクションコミックス)

シートン 第3章 (アクションコミックス)

ところで、私が子供の頃に読んだ「シートン動物記」、どこの出版社のものが忘れてしまったのですが、挿絵もシートンの手によるものでした。それがまた素晴らしかったのを覚えています。今Amazonで見てみると、その判は発刊されていないみたい…。