「日本文化は、なぜブームで終るのか。」#4

前日からの続きです。

那須 正幹
児童文学作家
㈳日本児童文学者協会 評議員

土地や金銭などの財産は、未来永劫正当な相続者に継承されるが、個人の創造物
である著作や音楽など知的財産は、死後一定の期間が過ぎると権利を失う。べつ
にわがままを言うわけではないが、せめて欧米並みの期間を保証してもらいたい
と、切に願っている。

「土地や金銭などの財産」は、相続の際に相続税がかかりますね。「個人の創造物である著作や音楽など知的財産」はどうなのでしょうか? 「個人の創造物である著作や音楽など知的財産」と言いますが、個人の創造といってもそれは、先人の創造の上に成り立っているものではないでしょうか? 全くの個人の創造物なんて世の中には有り得ないと思います。だから、いつかはそれを、先人に、それから後に続く者に“お返し”する、それが死後一定の期間が過ぎると権利を放棄することの意味なのではないでしょうか。

直ぐに権利を放棄しろ、と言っているわけじゃないんです。死後50年間は、今だって守られており、「土地や金銭などの財産」のように相続者にその権利を引き継いでいるのです。死後50年間も、ですよ! それ以上延長しろ、ということは、私には我が儘に聞こえるのですが、そうじゃないんでしょうか…。

西岡 琢也
脚本家
㈿日本シナリオ作家協会 理事長

一瞬のひらめきを得るのに、気の遠くなるような時間がかかる事がある。反対に
気の遠くなるような時間のかかった仕事が、一瞬で盗まれ破壊される。想像は時
間との戦いだ。わが創造物はいつまでも輝きを保っていると信じたい。その為に
「長い評価」が欲しい。

著作権保護期間が70年であることが「長い評価」なのですか? 現在、その評価期間が50年である今も、評価も注目もされずに時間に埋もれていく作品が多くあるというのに…。

寺島 アキ子
脚本家
㈿日本脚本家連盟 常務理事

著作権の保護期間を、死後70年に延長して欲しい。現在、世界の半分近くの国が、
死後70年になっています。先進国と言われる国のうち、未だ死後50年の国は、日
本など極めて少数です。わたしは、日本国の名誉のために、死後70年にして欲し
いと思います。

先進国と言われる国のうち、未だ核を保有していない国は、日本など極めて少数です(以下略)

福王寺 一彦
日本画家
日本路術著作権連合 理事長

生命を懸けて創作した作品とその制作態度は時代を超えて人の心を癒し、掛け
替えのないものです。昨年に安井曽太郎先生が、今年は高村光太郎先生が、来
年は小林古径先生と川合玉堂先生が、09年に横山大観先生が著作権消滅になっ
てしまいます。保護期間延長を祈らずにはいられません。

著作権が消滅してしまうと、どんな害が起るのでしょうか? 安井曽太郎氏の著作権が消滅して一年たった2007年、どんな害が起っているのでしょうか? 私の目にし耳にする限りは及んでいません。だからどうでもよい、というのではありませんよ、実感できないのです、申し訳ないのですが。これにより、海外との強調が乱れたりとか、しているんでしょうか? 著作権が消滅したので、人々の心は癒されなくなったのでしょうか? すみません、わかりません。

吹田 文明
版画家
㈳日本美術家連盟 理事長

保護期間の延長は作品の産み手である著作者にインセンティブを与え、文化芸術の
振興に寄与します。又、コンテンツが瞬時に世界中を飛び回る今日では、一国のみ
で著作権を守ることはできません。国際的な強調が不可欠です。それが国同士の文
化を尊重することにもなります。

死後保護される期間が20年延長されることが「作品の産み手である著作者にインセンティブを与え」るのですか? どう「文化芸術の振興に寄与」するのでしょうか?

一国のみで著作権を守ることができない状況はわかりますが、それはまた別な問題、システムの問題であるように思います。著作権の保護期間の問題ではないと思うのですが。

林 真理子
作家
㈳日本文藝家協会 理事

徹夜の連続で生み出した自分の小説は、大切にしてもらいたいし、読まれればもっと
いい。いま、私の故郷の町に本屋はない。活字文化を守り育てる妙案を真剣に考えて
ほしいと思う。作家の著作権が、日本では死後50年までというのも文化の貧しさなの
だろうか。

「いま、私の故郷の町に本屋はない」問題は、著作権の保護期間の問題ではないでしょ? 著作権の保護期間を著作者の没後70年間にすることが「活字文化を守り育てる妙案」に成り得ますかね? 

「作家の著作権が、日本では死後50年までというのも文化の貧しさなのだろうか」? 否。どこをどう判断すれば、文化が貧しいことを説明することになるのか、まったく理解できません。

松本 零士
漫画家
㈳日本漫画家協会 常務理事

漫画家という創作、創造の道を選んだ私達は、生涯を懸けた夢を果たす為にひたすら
歩んでいる。そこには明日への保証も、定年も未来への保証も何も存在しない。年代
もキャリアも関係なく、互いに夢を追いながら、命尽きる瞬間まで、ひたすら創作、
創造への挑戦を続ける覚悟で皆この道を駆け続ける。いつ路傍に亡骸をさらそうとも、
自らの選んだ夢に悔いは無い、刀をペンや絵筆にに持ち替えた永遠の浪人として創作
の道を歩いている。金の為だけに創作をしている訳ではない、思いを懸けた夢と創作
者としてのプライドが総て、70年延長問題に凝縮されているのです。

「金の為だけに創作をしている訳ではない」と松本氏はおっしゃるが、氏の言動を鑑みるとどうも「金の為だけに創作をしている」に帰結してしまいます。私の解釈のどこが食い違っているのだろう(^_^;)

「生涯を懸けた夢を果たす為にひたすら歩んでい」て、「明日への保証も、定年も未来への保証も何も存在しない」「年代もキャリアも関係なく、互いに夢を追いながら、命尽きる瞬間まで、ひたすら」その姿勢と行為を貫いているのは、漫画家だけではありません。そう、蕎麦屋うどん屋は、死んじまったらおしまいです。死後50年に渡る何らかの保証なんて、得られません。でもみんな、「挑戦を続ける覚悟で皆この道を駆け続け」ているのです。




以上です。ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたしますm(__)m>ALL