ローカルの病院へ行った。


一晩中痛くて眠れないまま朝を迎えた。汗びっしょりだし、普通の筋肉痛も出てきて、もうなにがなんだか訳がわからない。意識朦朧としながら、会社SNSに遅刻する旨を書き入れた。

怪我をしている方の足は、足先が何かに触れただけでも痛い。「ぐっ!」「いたっ!」と言いながら、どうにか風呂場まで移動して、シャワーを浴びて、着替えた。それからタクシー会社に電話をして迎車を手配して、病院へ向かうことにした。テーピング効果のある包帯で膝を固定して。しかし、部屋から下まで移動するのがこれまた一苦労だった。そして、アパートの玄関から道路へ出るまでも。もうどうやって移動したのか覚えていないくらい痛かったし、必死だった。

病院へ着いたときも、車から降りたらもう動けなかった。ちょっと待ってから病院へ入る。まだ受付が始まっていなかった。時間なんて気にしている余裕がなかった。なんか貧血っぽくすらなってきて動けなくなる。看護婦さんが車いすを持って来てくれて、動くのを手伝ってくれた。

それから診察を受けるまでのことはよく覚えていない。早く順番が来ることだけを祈って待っていた。

順番が来て、看護婦さんに車いすを押してもらって診察室に入った。若くてイケメンな先生だった(こんなことは覚えているなんてスゴいな自分!)。診察もそこそこに、レントゲンを撮りに行くように指示される。

レントゲン室までまた看護婦さんに連れてってもらって、レントゲンを撮った。車いすからレントゲン台に移動するのとか、ほんとに貧血になりながらだったけど、もうどうにでもなれっていうかそんな感じだった。

レントゲンを撮り終わってから、また診察室へ。骨にはまったく異常が見られなかったので、これは靭帯でしょう、と判断された。先生が膝のあちこちを指で押して、痛いところを探す。それから膝を押して曲がり方を見てみた。膝から下が、得ないくらい外側に開く。見ているだけで痛い。内側側副靭帯(ないそくそくふくじんたい)の損傷と診断。膝をちょっと曲げた状態で膝から下をひっぱると、かくんかくんとずれる。内十字靭帯も切れたかゆるんでいるのではないか、ということだった。

膝の内側が、触って痛い箇所が狭く、腫れが少ないことから、内側側副靭帯は全損ではないかと診断された。残っていたら、それが炎症してちがった形で痛みが出るはずみたいだが、それがないとのこと。でも、人に寄って多少開きがあるので、一概には言えないとのことだった。MRIを撮って靭帯の切れ具合を見ましょう、ということになり、MRIの予約をして今日の診断は終わり、となった。

先生は若いけど、スポーツマンっぽく日に焼けてて、とにかく「たいへんだね、がんばってね」と同情的で励ましてくれて好感が持てた。

今のままでは動けないので、と、取り外しができるギブス(買い取り)と松葉杖を貸してもらった。ギブスの値段は7000円。松葉杖はデポジットで4000円。ほんと、怪我はお金がかかる…。

診察が終わって病院の外へて、私はとにかく会社へ行かなくちゃ、と思った。そして、駅までの道のりを、かなりあるんだけど、松葉杖で歩きだした。

歩き出してすぐに後悔した。けっこう距離があるのだった。でも、休み休み行けばイケるかなと思ったのだ、そのときは。もうくじけようにもどうくじければいいのかすらわからない状態だった。ただ、会社へ行こうと思った。脇と手がすぐに痛くなり、手に豆ができた。足がだんだんしびれてきて、汗びっしょりになった、でも、休みながら、駅へ向かい、会社へ向かった。

そうそう、両手があいていた方がいいと思ってディバッグを背負っていたんだけど、松葉杖にディバッグはダメだね。脇の下を通るベルトが松葉杖の脇の下のクッションに当たっちゃうのだ。ベルトがこすれて痛くなったり、松葉杖のクッションが削れたりした。次は気をつけようと思った。

池袋と新宿は、エスかレーターもエレベーターもあるのでまだよかった。でもラストの下北沢が地獄だった。下北沢はみんな階段だった。階段から転げ落ちないように必死だったと思う。あんまり覚えてないくらい必死だった。

西口の階段の降り口で絶望的な気持ちになって立ち止まり、しばし休んで歩き出したら、知らないお姉さんが声をかけてくれた。それで松葉杖を一本持ってもらい、左手で階段のスロープを持って、右手で松葉杖を持って階段を降りることができた。どこのどなたか存じませんがほんとうにありがとうございました。もうほとんど泣いてた。ここまで大変だったのと、親切にしてもらった嬉しさとで。

会社に付いたら、みんな唖然としていた。そりゃそーだよねー(^_^;)

隣りの席の上司Tさんがなみなみならぬ狼狽ぶりで、驚いた。

今日やるべき仕事があったので、それをなんとかこなし、こなし終わったところで上司Tさんが、電車があんまり混まないうちに帰宅するように言ってくれて、遅刻してきたにも関わらず定時で帰ることにした。Tさんが駅まで送ってくれた。が、あまりにも歩けなさに驚いて心配して、タクシーで帰るように、っていうかタクシーで帰れ!ということになった(^_^;) タクシーを待つ間には、コンビニに行って牛乳まで買ってきてくれた。申し訳なかったです、でも、有り難かったです(:_;)

下北からタクシーで練馬へ。なんかやっとほっとした時間が訪れた。タクシーの運ちゃんは寡黙な人で、助かった。気がついたらタクシーの中、ずっと、サザンの曲がかかっていた。

帰ってきて、牛乳を飲んで痛み止めを飲んで、飲み物を水筒に入れて枕元に置いて、寝た。

…が、数分ごとに、身動きをする度に痛くて目が覚めて飛び起きた。眠いのに眠れない。もう泣く力も残ってないくらい疲れていた。つらいつらいつらい。でも、咳をしてもひとり、どころではない。だた、痛いということだけがはっきりと知覚されることで、他はぼおっとしててなんだかわからないまま時が過ぎていった。