佐野元春 & THE COYOTE BAND 「COYOTE」 @ Zepp Tokyo

あんなに楽しみにしていたツアー、始まって、気がつけばもう関東圏千秋楽。神戸のチキンジョージはちょっと環境が違うとので、一連の大きめなハコでのライブはこれが最終日、なのでした。

Zepp Tokyoは、たぶん、このツアーの中で一番でかいハコなんじゃないかな。2000っくらい入るしね。天井が高くて音の抜けがいいし、ステージが奥にも横にも広いので証明のバリエーションもあります。客席の上にも照明があって連動して演出されるのとか。でっかいミラーボールあるし!(ミラーボール大好き)

(時系列に、というよりは、ぽつぽつとメモっていきます)


ライブ始まる前まではあんまり2週間“ブランク”があったとは思っていたかったのだけれど、客入れのMRSからオープニングの曲に変わりステージがブルーに染まり、バンドメンバーがステージに現れたとき、深沼さんとシュンスケさんの髪が「わー伸びたなー!」っていうくらい伸びていたのを見たとき、あれから時間が経ったんだなあと実感しました。小松さんはこざっぱりと短い髪をしていました。さすが体育会系。高桑さんは、…たぶん伸びていたと思うのですが、長かった、です(もうあんなに長いとどれくらいとかわからない…)。

深沼さん、メロへのときのステージ衣装のセミロングの黒い(紺?)のシャツじゃなくって、半袖の黒いシャツでした。

でも、前と違ったところはそれだけじゃなくて。いちばん「うわ、ちがーう!」と思ったことは、演奏でした。演奏が進化していた。赤坂&横浜で聞いたとき、もう充分上手い!と思ったのですが、やっぱり堅さがあったかな、と、Zeppを聞いて思いました。音が、よりそれぞれの音になっていました。そうそう、深沼さんのプレイグスのギターの音ってこんな感じ!とか、小松さんのノーナのときのドラムってこんな感じ!とか、Curly GiraffeとかキャラバンとかGreat 3のときの高桑さんのベースの音だよねこれ!とか。シュンスケさんに至っては、まだあんまりシュンスケさん自身のプロジェクトの音を聞いたことがないのでわからないのですが、前よりものびのびした音になっていました。タメとか、強弱付けるタイミングの入れ方外し方が、最初の2公演よりもっと自由になっていたように思います。スライドさせて弾くときなんか、キーボードの端までいっちゃって、それ鍵盤数足りてないんじゃないのっていうときがあって、やっぱりシュンスケさんピアノ弾いてた経験のある人なんじゃないかなーとなおさら思いました。

最初の2公演の、緊張感と、最初にどれだけ完成度の高い演奏ができるか挑戦、みたいな、ひとりひとりの方向性があってそこへ純粋に向かっているような雰囲気があったのですが、Zepp Tokyoの演奏は、もちろんその方向は目指しつつも、手を抜く…っていうんじゃなく、余裕っていうのかなあ、いい感じに緊張がとけて、その分お互いがお互いの音に絡んだりちょっかいを出している感じがあって、生ものっぽさが増していたような気がしました。

いい感じに緊張がとけててっていうのは、見ててもそれはすごく感じられて。バンドのメンバーはみんな、高桑さんとか深沼さんとかは自身のバンドではボス的立場になることもある人なのに、このバンドではもーオレは100%楽器弾くぜたーのしーぜー!って楽しんじゃっている感じがしました。佐野さんには、なんかそういう人をわくわくさせる力がある気がする。音楽をやっている人にはきっと、私には見えない文脈でまた、わくわくさせられているんじゃないかなあ。みんな、佐野さんに引きずられてもっと純粋に音楽を演奏を楽しんじゃっているモードになっていたような気がします。そしてときどき、佐野さんそっちのけで顔を見合わせて笑ったり、コンタクト取ったり、コーラスじゃないところも歌ってたり、とか、ほんと楽しそうだったです。佐野さん逆に、そんなわくわくな音に背中を押されるように、どんどん、…若返っている、という言葉だとちょっと違うと思う、じゃあなんだろうって考えると、よくわからないけど、…なんだか、今一瞬を楽しんでいるような気がしました。刹那的ではなくて。ライブ、という、今日これ一回の演奏を、心から楽しんで演奏している、と同時に、とても愛おしんでいるような気がしました。そして、没頭という閉じた感じの集中ではなく、多くの想いや気持ちをぎゅーっと束ねていくような感じの集中、 conversionっていうのかな、そんな感じがしました。こんなにわくわくするのに、どきどきするのに、同時にため息がでちゃうような、一瞬なのに永遠を感じるような、そんな、目の前で起っていること。ああそれはつまり、ライブ、その言葉通りのこと、なのです。

佐野さんと深沼さんのコーラスは、もう自然に声が合っていくような感じがしました。視線の先に、佐野さんがいて、その向こうに深沼さんがいて、っていう画を見ながら聞くのを、ほんとに現実にできればいいなと思ってて、赤坂&横浜ではそれが現実になった喜びでいっぱいだった。Zeppでは、もうちょっと冷静に聞けるかな、と思ったけど、やっぱり、あんまり冷静に聞けなかったです(笑)

Zepp Tokyoならではの照明も素晴らしかったなあ。私のいたところは、ステージからの光も、フロアー上の光もこぼれるところで、ときどきそおっと後ろを振り返ると、フロアー中の笑顔の上にきらきらと舞う光の粒や、会場中を横断する緑の波とかが見えて、とてもきれいでした。深沼さんのソロのときのスポットは相変らずピクチャーパーフェクトでした。もう一生忘れないくらい目に焼き付けましたよ!

「ヤングブラッズ」、赤坂&横浜よりも冷静に聞く事ができました。長く聞いていて耳馴染んでいる曲だからか、この曲がツアー中に確実にTHE COYOTE BAND色に成長したなあと感じました。ドラムとかもう、小松さんの、1拍が深く長い、タメのある、でもばっちり合ってくる感じのドラムになっていました。乾いて響くけどドライじゃなく、きらきらしているんだよなあ、小松さんのドラム! リズムとメロディーと両方兼ね備えた高桑さんのベースと、ドラムの跳ねる感じにのっかる深沼さんのギター、ボーカルを押し上げるように音を重ねるシュンスケさんの鍵盤。レコーデッドバージョンともう全然違う、別バージョンの「ヤングブラッズ」だ、と思いました。かつて「ヤングブラッズ」を聞いていたバンドメンバーのみなさんの演奏で、この歌を歌う佐野さんが聞けて、それと一緒に歌うことができて、ほんとに自分、いいときに生まれたなあ、と思いました。そして、佐野さんの音楽に会えてよかった。深沼さんの高桑さんの小松さんのシュンスケさんの音楽に会えてよかった。今日ここで、2000人強の人と一緒に、歌ったり踊ったりして、楽しむことができて、よかった。

2回目のアンコールが終わってから、もう一度出てきてくれて、バンドメンバーが中央に集まってひそひそ相談。佐野さん、これ、よくやるよね(笑) いや大好きなんだけど! 深沼さんとかマジな顔してコク、コクと頷いていたので、仕込みでなくてほんとに相談していたのかも。頭ひとつ高いところから高桑さんがしれーっと聞いている姿が、高桑さんほんとにキリンみたいだと思いました(笑) 最後の「星の下 路の上」は、オープニングよりもちょっと走り気味だったけど、それがまたかっこよかった。ちょっと鼓動が速い感じを最後にやられちゃうと、全然ファイナルって気がしなかったです。まあ実際あと1公演残っているわけだけど…。

ずっと見ていたい、けど、終わりがあるからこそ今この素敵さがしみるんだ、と、無理矢理思うことにして、このバンドを見れるのはあと1回という事実に慣れようと思います。