ストリング・カルテット・オン・ウイークエンド(SQW) #68 「ときめきと憧憬」

クラッシックの情報を集めるのはなかなか大変なので、自分の聞きたい演目が見つかるとほんとうにうれしいものです。夏前に、北海道から帰ってきた夜に聞いた曲が、こんなにすぐにまた生で聞けるなんて。そして今回は、この曲を知らなかった友人を誘って行きました。その友人がこの曲を知らないというのは困るのです、だって私が彼女よりも先に死んだら、彼女がこの曲を私の葬式のときにかけてくれる人になるのだから。



ストリング・カルテット・オン・ウイークエンド(String Quartets on Weekends Season)という、NPOトリトン・アーツ・ネットワークが第一生命ホールで行っている企画の、「Festa 四重奏万華鏡-弦楽四重奏の250年」と題されたプログラム。6日間で1シリーズだったのですが、経済的時間的都合により2日間だけ参加しました。

今日は、3日目の企画で、副題は「ときめきと憧憬」。3曲中2曲は知らない曲でした。で、そのうち1曲は、作曲家さえも知りませんでした。それが1曲目のハーバート・ハウェルズの「ファンタジー」でした。演奏はクァルテット・エクセルシオ、メンバーは全員日本人でした。

弦楽四重奏ってとういう音楽かー、と言えるほど私はそんなに弦楽四重奏を聞き込んでいないのですが、うーん、曲想が次々と変わっている展開がちょっとついていけない感じがしました(^_^;) でも第2ヴァイオリンがすごいかっこ良かった。パンフレットを見たら「曲想の転換で常に第2ヴァイオリンがリードするのがちょっと不思議」とありました。不思議てー。いいではないのー。

次の曲はバルトーク弦楽四重奏曲第1番Op.7 Sz.40。夏に大失恋をして、その翌年に書かれた曲なんだそうです。演奏はここから、ボローメオ・ストリング・クァルテット。キュレーターのキッチンさん率いるクァルテットです。ちなみに、キッチンさんはそうとうなテッキーと見えて、譜面はノートPCで表示、になっていました。足でマウスをクリックすると画面が変わるっぽかったです。

この曲は、バルトークの曲らしい激しさが前面に出ている感じがしました。曲のスピードも、どんどん速くなるし。そーかこれが失恋後かそーかそーか( ゜Д゜)…と思うと、聞いているこっちはドン引きするくらいの激しさでした。

しかし、なんというか、この2曲はちょっと私には理解が難しいものがあったかなあ。最後の曲がとても好きすぎるっていうのもあるのですが。

休憩の後、ボローメオ・ストリング・クァルテットに先のクァルテット・エクセルシオから2名が加わり、弦楽六重奏になって、チャイコフスキー弦楽六重奏ニ短調Op.70「フィレンツェの想い出」です。パンフレットによると、この曲がなんでフィレンツェなのか理由不明なんだらしい。そして「この作品の持つロシア的な内容との間に…」…え、ロシア的、ですか?!ううーん、クラッシックは奥が深いなあ、わからんなあ(一緒に行ったお友だちは、ああわかる、と言っていたけど。でも、彼女好きなの「モルダウ」だしなー)。

今日3曲の中で、チャイコが一番メロディアスだったなあ。とても聞きやすかったしイメージしやすかったです。知っている曲っていうのを抜きにしても。6台の楽器が、入れ替わり立ち代わり主役になり、次はどれが主役になるのだろうと追っていると、ひとつの大きなうねりになって心を打つのです。これをキュレイター氏はこう言っていました:
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チャイコフスキーの「フィレンツェの想い出」は、力強い感情の吹き出しを上手く内在させた魅力的な構造を持つ、スケールの大きい音楽です。彼は、高められた感情に「歌」を与えることのできるユニークな音楽的な表現力を持った作曲家。見事に整理された音楽形式の中に、ごく自然に、それら感情表現の場を見出すことのできる才能を持っています。<

ああ、やっぱりこの曲好きだなあ。もし私がこの時代にこの曲を聞いていたら、ライヴ(?)が終った後にチャイコフスキーに声をかけていたかも。ちょっとキミのこと気になってさ、この後時間ある? じゃ、飲まない? みたいなね(笑)

今日の演奏は、先日聞いた演奏解釈と、またナジャの演奏するバージョンとも、違う気がしました。今日の方が感情が押さえられていて音が切られずに緩やかに繋がっていました。とくにヴァイオリン。感情の高ぶりはあるけど、涙は流していない、そんな印象を受けました。キッチンさんの解釈なんだろうなあ。オリジナルの楽譜にあんまり細かい指示がないのかな? 今度楽譜を見てみようと思いました。

まあ、あんまりちゃんと理解できなかった曲もあったけど、演奏者の技量はほんとうに素晴らしくて、もうそれだけで体がシートに埋まるくらいの衝撃を受けました。こんな人がそこかしこに(ってそんないっぱいはいないんだろうけど、この夜に8人もこんなホールに集まっちゃうくらい)いる、ということが、すごいなあ。そんなんが生で聞けちゃうんだもんなあ。ありがたいことだと思いました。

さて、葬式に曲をかける依頼をうけた友人は「やばいって!ソナタな導入とかヤバいって。カンタービレやばいって。葬式であんなんかけたらみんな沈むって」と、考え直すように言われました(^_^;)