L'Arc-en-Ciel TOUR 2008 L'7 - Trans ASIA via PARIS - @ 東京ドーム

何年か振りに東京ドームにライブを見に行きました。

ラルクのドーム!
(゚∀゚)!

よく考えたら、私ってばまだ、東京ドームに野球を見に来たことはありません。



私のL'Arc-en-Ciel知識は酷いもんで、ライブに行くと決まったときですらラルクのメンバーが何人なのかすら知りませんでした。確か、私が日本にいたころからテレビとかに出ていたなあ、USでも数回テレビで見たことがあったなあ、とか、その程度でした。楽曲については1曲だけは自信持って知っている!という曲がありました。去年NHKでやっていたアニメ「精霊の守人」のオープニングの曲がL'Arc-en-Cielの曲だったのです。このアニメは毎週見ていたし再放送も見ていたし、何よりオープニングのアニメーションがすばらしくて、画と共に歌が記憶に刻みついていたのでした。今日はこの曲が生で聞けたらいいなあと思っていました。

そうして、誤解を恐れずに言うならば、L'Arc-en-Cielはいわゆる「ヴィジュアル系」のバンドだと認識していました。

自分でも、あらゆることが「こんなシチュエーション」でライブに行く機会なんてないだろうな、と思って、当日まで特に予習もしないでライブに望みました。



私は、友人と飯田橋の駅からドームに向かって言ったのですが、お茶の水とか水道橋からの人の波にびっくりしました。こんな感じのデカいライブはほんとに久しぶりで。客層も幅広く、お嬢さんからお母様まで、といった感じでした。活動長いバンドなんだなあ、と、改めて思いました。みんななんつうか「ちゃんとした格好」で来るのかな私浮かないかな、と思っていたのですが、そんなことはありませんでした。でも、手作りの衣装とか、おトモダチと格好を揃えて来たりとか、そういうのいいなあ、自分けっこう好きだったりします(^_^;)>

私達の席は2階の席でした。ドームに入ると、ドームライブ独特の、アリーナにびっしりと設置されたイスと、そこをまたびっしりと埋める人に圧倒されました。この光景は普段テレビで野球中継しているときと全然違うし。そして次に驚いたのは、そのメインアリーナに立つ4本の柱です。柱の上の方には赤坂BLITZの前の方にかかっている、ムカデを縦にしたみたいなスピーカーのデカいのがどーんと設置されていて、柱の周りにはぐるーっとライトがセッティングされていました。空中にあんなバカでかいスピーカーを4機もすえつけるなんて、有りなの?! あの照明は明らかにステージの方を向いていないんだけど、どう働くの?! 気分は、初めてのドームライブ、でした。バックスタンド前に設置されたステージには白い幕がかかっていて、場内のわずかな風に大きくゆっくりと揺られていました。

ちょっと遅れてライブスタート。場内の客電が落ちたと同時に、地鳴りのように沸き上る女子の歓声! その沸点具合と一糸乱れぬシンクロ具合に度肝を抜かれました。そして暗闇に浮かび上がったのは色とりどりのペンライト! すすす、すごい! まだライブ自体は始まっていないのに、アドレナリン・ラッシュになりました(笑)

前方左右に据えられたスクリーンに、ムービーが映し出されました。この日本の公演までの間、ラルクはアジア各都市とパリを廻ってきていて、その行程を大航海時代になぞらえて、ラルクのメンバーは海賊船?のボス格という設定で、メンバーと廻った都市が紹介されていきました。メンバーひとりひとりが写し出されると、その度に歓声が起こりました。そこで私は遅まきながらラルクのメンバーの名前を知りました。ひときわ歓声が大きかった人の名前がhyde、ってことも。

歓声がまだ引き切らないうちに、爆音と共にステージの幕が上がりました。一段と大きくなる歓声! ステージは、さっきのムービーはなるほどこれだったのか!と思わせる、大きなマストを備えた帆船のセットでした。左右に大砲とかあるし、ハタはあるし、ステージの奥に向かって組まれた照明ややぐらなどの実用的な鉄骨を上手く使って装飾部分も組んであり、ほんとうに大きな船に見えました。メンバーのみなさんも、さっきのムービーの海賊の格好、してるし。ステージのサイドで踊っているダンサーたちも海賊の船員のカッコをしていました。ミュージカルかオペラみたいだと思いました。

そして何よりびっくりしたのが、音がとてもよかったこと!でした。ドームと武道館ったら音は二の次で、みたいな印象があったのですが、ぜんぜん、そんなことありませんでした。下手に中規模なコンサートホールの方が残響残りまくってキビシいよ、ってなぐらい音が良かってです。ほんと最近PA技術は上がったんだなあ、と思いましたけど、それだけじゃない、今回のこのセット、ハンパなくお金かかっていましたよ! あのセット、赤坂BLITZとかみたいに常設でっていうんじゃないんだもんなあ! これ一晩のステージだったら、間違いなく赤字だと思います。3daysだからこそできた豪華セッティング、豪華演出!

ステージ演出も、1曲として同じ演出はありませんでした。その曲の雰囲気とか、ステージ全体に横たわるストーリー(天気のよい日にノットを上げて航海している感じ、とか、夜の海を漂う感じ、とか)に合わせてセットが変わって行きます。ステージのみならず、ドーム独特の白いターフを貼った天井も有効に活用していました。よく考えたなあ、あんな演出! そして、4本の柱に据えられたライトは主に客席に演出を添えるものだったのです! …と、私は、ちょっと前に、ライティングの仕事に就いている後輩から聞いた話を思い出していました。そうか、あいつの言ったことはこれだったんだ!と。 客席にも積極的に演出を入れる照明、だったのです。客席中がまるで一枚の赤とオレンジの絨毯になったかのように一部の隙もなく染め上げられたときは、思わず鳥肌が立ちました。2階席でよかった!とすら思いました。

船の後方からまばゆい光が、きらめきながらゆっくりと前の方に移動していくシーン。光が前に移動していくというよりも、船が進んで行った後ろに光が残る感じです。あれ、これって水中から水面の方を見たときに水面が光る感じだ…と思っていたら、私の知っている前奏が始まりました。あ、この演出、あの曲のだったんだ!と思ったら、やっぱり、思わず立ち上がってしまいました。聞きたかったあの曲がこんな演出で聞けるなんて…いつものライブで一緒に歌うのと、またちょっと違った感動がありました。そうそう、 曲のタイトルもわかりました。「Shine」って言うんだって。そういえば歌の最初の歌詞が“I want to shine on you / and always like the dazzling sun / How will defend you from all darkness / This is the truth from my heart”だったもんね…。

他にも、アジアのツアーの様子を紹介するムービーをちょっとコメディーちっくに仕立てたもの(L'Arc-en-Cielって名前のウィルスが流行ったら、その人はこのライブに来ていた人だね)とか「ラブストーリーは幕間に」(しかし、万人に“愛されている”石田純一っていう人はスゴいなーと思いましたよー)とか。花火や炎を使った演出もあったし、レーザー光線は飛び交ったし、ロボットの様な動きをする骸骨幽霊海賊とか、帆船の帆が赤くなったり白くなったり。“宇宙初披露”の新曲「NEXUS 4」の発表もあったし(ここだけかちっと「NEXUS 4」の文字が闇に浮かび上がったので、鮮明に記憶に焼き付いたみたい)。

全然知らない曲ばかりなつもりだったのですが、結構カラオケとかで誰かが歌っているのを聞いたことがある曲が多くて、「あーこれ知ってる!」がたくさんありました(笑)本家が歌うのを初めて聞くのがライブ、という体験は貴重でした(笑)

音がいいと言っても、やっぱり、歌詞をちゃんと聞き取るにはちょっとキビしかったです。楽器の音ひとつひとつを聞き分けるのもキビしかった。そこはやっぱしドーム、しょうがないなと思いました。でも以前に比べたらほんと充分楽しめました。何よりあれだけ広いところじゃツインバスが映えて、それだけで自分テンション上がりましたし。ボーカルのhydeの歌い方は、もろ喉で勝負!という感じの歌い方で、あれで3日間持つのかなあ、と、ちょっと心配になるくらい全力疾走していました。その姿勢がなんか、うれしかったです。

しかしこれは、いつものライブと同じライブではないなと思いました。どちらがいいとか悪いとかではなくって。多くの人と記憶を共有すること。今日ここでこうやって集まって同じ空間で同じ音楽を体験すること。この、共同記憶装置としてのライブ。できるだけ多くの人と記憶を分かち合うこと、それはそれで有りだなと思いました。そうだなあ、ミュージカルとか映画とかを見たときみたいな感じかな。シルク・ドゥ・ソレイユとかサーカスとかも近いかも。あ、でも、それらよりも確実に違うのは、まあ私はあんまりそうではなかったけど、ここに集まった多くの人は今日この日まで、みんなひとりひとりL'Arc-en-Cielとの体験、というか、記録がある、ということです。記憶、といってもいいのかも。そういうそれぞれ、みんな違うそれぞれが集まって、同じだ、を体験すること。こんなにたくさん「同じ」な人がいることを体験すること。そういうライブもあるんだと思いました。少なくとも私は、ライブが終わったあとに一緒に見にいった友人とイタリアン・バールでおいしいお酒を飲みながらライブの話をしたし、月曜日に会社に行ってからも同僚にたくさんこの話、したしね。



ライブに行ってきてからL'Arc-en-Cielのことを調べました。そして、ほんとだ「同世代」だと確認しました。もう10年以上活動していたんですね。しかも、その10年は決して平坦な10年じゃなかった。華々しいことばかりな10年でもなかった。それでもあれだけ華やかな演出でやっていた…すごいと思いました。エンターテナー。エンターテインメントで飯を食うということ。

Wikipediaの記述で、L'Arc-en-Cielのみなさんは「ヴィジュアル系」と言われることを佳しとしていない、とありました。それはわかるのですが、私は、彼らに、別な「ヴィジュアル系」の定義をしたいと思います。すなわち、その歌と演奏つまり聴覚に頼る刺激のみならず視覚的な刺激をも含めた感動や記憶を提供するエンターテナーまたはアーティスト、と。今、目を閉じて「Shine」を口ずさむと、「精霊の守人」のオープニングムービーを思い出すのと同じくらい鮮明に、両手を広げたhydeが船の先頭に立ち、風を受けて波の光を受けて歌っている姿が思い浮かびます。なんていうか、すごく…清々とした顔していたなあ、hyde。This is the truth from my heartと言ったその言葉は嘘ではないと確信できるほどに。私hydeって人のこと全然知らないのに。彼らに“そんな”10年があったことなんかみじんも感じさせないくらいに。きっともうこれからずっと忘れないだろうな、これ。

2011年まで、ライブ活動はしないと宣言したL'Arc-en-Ciel。どんな理由があるのかわからないけど…惜しいことだと思います。昨今の音楽ビジネスのモデルは、コンサートやライブでペイバックを取る、ということになっている/なりつつあるようですが、L'Arc-en-Cielはこれから、どこへ行くのだろう、でも、次のライブは、何年向こうであっても、今日と同じように多くの人と記憶を共有できるものであることを信じています。