440(four-forty) 6th Anniversary 〜 "THE HIKIGATARI JOINT STRUGGLE"

ポケットにお財布とハンカチを入れて「いってきます」と言って、でかけました。こんなふうにライブにでかけられるようになるなんて、最初話を聞いたときは半信半疑でした。でも何もかも本当です。昨日会って食事をした友人が「そうだったらいいなーと思ってたんですよ!」って言ってくれたのを、ふと、思い出しました。



ちょっと早めに行って、ちゃんとイスに座って聞けるようにしました。「とまらん棒」をぽりぽりかじりながら始まるのを待ちました。ステージの真ん中にはすでに低くセットされたマイクスタンドとイスと、譜面台と、サイドテーブル代わりの丸イスが置いてあり、赤いギターが置いてありました。あっ、あれは近藤さんのギターだ…近藤さんがトップなんだな、と、わくわくしながら待っていました。

そして時間になって、ステージの上手から出てきたのは、近藤さん。髪は…こないだのGHEEEのときからまだ伸びてるっぽい感じでした。まるでビアデッド・コリーのようです(^_^;) あの“ステージ衣装”のシャツはleteのライブで着ていたシャツかな? 手にファイルを持って、ステージの中央に…と、そのままギターの後ろを素通りしました。えっ、と思っていたら、近藤さんはすとん、と、下手にあるアップライト・ピアノの前に座りました。よ、よくみたら、ピアノのフタ開いてる! トップも開いてる! まさか…!と思いました。そのまさかでした。今日の近藤さん、ピアノの弾き語りからスタートでした。完全に不意打ちをくらいました。

それだけでも心臓撃ち抜かれ的なショーゲキだったのに、ピアノのイスに座った近藤さん、燕尾服の後ろをお尻の下に挟まないようにする人みたいにちょっとぱぱっと手で後ろを払いました。…近藤さん、オーバーオールのペインターパンツなんじゃん! 肩外しているけど! …年齢不相応にかわいすぎですー!

そんな私のショーゲキを余所に、近藤さんの第一音めがピアノから流れてきました。題名覚えていないけど、何度か聞いたことのある曲だってすぐにわかりました。あああの曲、ピアノで弾くとこんなになるんだ、と思いました。ピアノの近藤さんも、ギターの近藤さんと同じで、ぜんたいがすごーく柔らかい。柔らかいけど、聞いているとちゃんと音がどんどん積み重なって、気が付くと強くなったり弱くなったりしていました。鍵盤の上への手の置き方とか、ちゃんとピアノを弾いていた人のそれっぽかったです。

前に友人と話したことがあるのですが、ピアノとギターって、同じ人が弾くとほとんど変わらない気がするのです。それだけ近い楽器なんだろうねえ、と話しました。基本手で弾くし、弾く楽器だし、体の前で弾くし、とか。音調がグルーヴが、だいたい同じな気がするのです。なので、近藤さんのピアノのも、ずっとずっと聞いてみたいと思っていたけど、その音を聞いたらそれはとっても知っている音だったので、なんというか、ただほっとしました。初めてなのに知っている安心感というか…ああ、会えたね、っていう感じかな。全体的な感じは、歳とってからのマリアン・マクポートランドが近い印象かなー。マリアンはジャズの人だけど、あんまりジャズっぽくない曲を弾くときの感じが近いと思いました。

ピアノ2曲弾いてからギターに移りました。イスに座ってポケットに手を突っ込んで、ぐうを開いて、小銭の隙間からピックを探す、その間はGHEEEってバンドを今やってて、そのツアーが先日終ったんですよ、と、早口で話していました。赤いギターを抱えた近藤さんのその話し方そのしぐさの光景、もう見知ったものだったので、私もだんだんほっとしてきました。それでせっかくなので、そのGHEEEの曲やります、

Lucifer。

…!!!! え?!

まだ、私の中から「?!」が消えないうちに演奏が始まりました。私の頭の中からも一気にあのメロディーがこぼれてきました。あーでも、今日のこれは、ちがう、これはGHEEEじゃない近藤さんの曲だ、近藤さんのバージョンだ。ならば聞かないと。次にいつこれ聞けるかわかんないじゃん…! でも、歌が聞こえてくると、つい自然と一緒に言葉が出てしまいました。でもこれは、私の知っている曲じゃない、メロディーを歌詞を知っているけど…。何度かライブで、違うアレンジとか違うバージョンとか、他の曲で聞く、あのときの印象とは全く違った印象がじわじわと湧いてきました。やっぱりGHEEEは、近藤さんの曲でもあれは、GHEEEで演奏しているときはGHEEEの曲なんだなあ、そして今日のは近藤さんの曲なんだ…と思いました。ギターのソロならぬ、ハーモニカのソロも含めて、それはso-近藤さん、でした。


近藤さんの次は、うつみようこさんでした。うつみさんは、お帽子を被って、デニムのオーバーオール、ちゃんと肩かけて着ていました。小柄なうつみさん、ギターがとても大きく見えます。実際ちょっと大きなギターだったなあ。うつみさんの声同様、ストレートのとてもよく響くギターでした。

うつみさんの曲は実は全然しらなかったんですが、どの曲も体をずっと通り過ぎていって潔いものがありました。知らないことが全然いやじゃなかったです。カバー曲も何曲か演ってくれたのですが、その選曲がマイど真ん中、でした。キャロル・キングの「You've gatta friend」なんて…反則すぐる(T_T)! 久しぶりにこの曲生で聞きました…たぶんMountain Schoolの卒業式以来です。そのときのことが思い出されて、思わず一人場違いな感じで号泣しそうになりました。必至でこらえましたよもちろんー。それからローリング・ストーンズの「スウェイ」とか。プレスリーの曲とか(それも、誰か女性の曲のカバーなんだって)。胸にぐうを置いて聞かざるを得ませんでした。

近藤さんとは20年来の友人なんだそうです。おいしそうにビールをいただきながら、ゆるゆると、開場中の空気をその手に納めてリリースする…そんなギターでした、そんな歌声でした。


最後、藤井一彦さん。THHE GROOVERSのステージや、佐野元春さんのサポートで藤井さんのギターを聞いたことはあるけれど、ソロで、弾き語りで、アンプラグドで、は、初めてでした。

藤井さんは、立ち弾きで、イスなし、譜面台なし、のセッティングでした。GHEEEの初ライブは、この440の下でTHHE GROOVERSと対バンだったんです。で、THHE GROOVERSのMCの一声目が、藤井さん、「こんばんは! プレイグスです!」だったんです(笑)

そして今日は…「こんばんは、小栗旬です!」

…しーん(笑)言うに事欠いて小栗旬かい(笑)! 藤井さん、ご機嫌ちゃんでした。後でMCのときに聞けば、近藤さんに誘われてどうしても断れなくて数杯ひっかけた、んだそうです。でもMCは滑っています、滑っていました。場内、ややぎこちない空気で満たされていました。

しかし、そんなのなんのその、藤井さんメインのお客さんの煽りにも乗せられて、逆境になるとそれを補おうとしてパフォーマンス爆発! これ、某F沼さんと同じ血統なのかしら…もうまじキレキレのパフォーマンスでした。ブルージーかつジャジー、やっぱりグルーヴの名を冠するバンドの向こうを張っているだけあります、思わずコチラいすから立ち上がっちゃいそうになるくらいキレてました。

キレると言えば、藤井さんのカッティングは、ああもう次にギターの弦がざくんと切れてしまうんじゃないかというくらいのキレっぷりで。エレキの音とはまた違うアコースティックのキレと響きは、アコースティックギターよりもすっとマシンっぽいエレキギターよりもずっと武器な感じがしました。それがごんごん重なってステージから降ってくるのです。まるで音が投げられてくるように。空間を切るように。これはライブじゃないと感じられないものだと思いました。一過性のものかもしれない。レコーディングできないものは「飛び道具」であって音楽ではないかもしれない。一時の衝動とアドレナリンを放出してそれで終わりかもしれない。でも、それがどうした?!と、胸をはって言えるくらい、その音はアナタの予想できないものを、ことを、ふるわすのですよ、グールドさん。


アンコール。まずは、小栗旬こと藤井さんが一人でステージに現れました。「ここからは、カバー特集でーす!」…ご機嫌ちゃんです(^_^;) その、さんざんご機嫌モード全開ではしゃいでMCした藤井さんが選んだ曲は、「ムーンリバー」でした。反則です。今日はもうみんな反則です。さっきまでの武器はどこいっちゃったの?!っていうくらい、ブルー・イン・ブルーなムーンリバーでした。

藤井さんが演奏し終わって、拍手がまだ鳴り止まないうちに、近藤さんがステージに登場。いやあ、期待はしていましたよもちろん! 近藤さんもちょっとご機嫌ちゃんでした。そういえば、うつみさんと藤井さんが演奏しているとき、ずっとソファーで、飲んでいらしたんです。トップバッターの強み(^_^;)

この二人が演るったら、当然…ええ、期待していたとおり、ルースターズのカバーでした! しかし選んだ曲は…「ガールフレンド」、だっけ? オレのガールフレンドめっちゃかわいいんだぜ〜最高かわいいんだぜららら〜的な歌詞のヤツで。それを、めっちゃニコニコしながらふたりで歌ってて。いやあ〜、こっちがなんかこっぱづかしい気さえしました(^_^;) おっさんの歌うガールフレンド。最高でした。

そしてそして、期待していたけど、最後はうつみさんも3人で。なんと藤井さんが最年少なんだって。珍しいシチュエーションです。このメンツで歌うはやっぱり、うつみさん。ジャニス・ジョップリンの、あれ、ほら、有名なやつ!を歌いました(これじゃなんだかわかりませんね(^_^;))なんと藤井さんはピアノでした! ライブでピアノを弾くのは、長い藤井さんの芸歴の中でも初めてのことなんだそうです。でも、そうとは思えないほど馴染んでいました。藤井さんのピアノも、藤井さんのギターと同じで、ストレートな音が空気を裂くような感じでした。それがまた、ジャニスの曲に合っていました。近藤さんは真ん中でギター。わははーって感じになっちゃてました。今日もほんとに楽しいんだろうなーと思いました。横に揺れながらリズムを取る、なんて、近藤さんの弾き語りでは見られません(座って弾くしね)し、GHEEEでももちろん見られない(GHEEEのときは細身のパンツはいているしね)近藤さんでした。ぱたんぱたんとゆれるオーバーオールの肩ひもとサポーティブなギターがナイスすぎでした。しかし、うつみさんまで見たときに、今日はオーバーオール縛りがあるのかと、藤井さんもオーバーオールだったらどうしようかと思っていました(笑)。

最後の締めがあまりにも素晴らしく、もうこれ以上アンコールをねだろうなんて気が起きないほどのすばらしい締めでした。


440の6周年記念企画。440、6周年おめでとう! すばらしい企画でした! 企画してくださってどうもありがとう!と言いたいですほんとに。でも願わくばこれ…もっと多くの人が見れるといいなあと思いました。こんなに素晴らしいのに、平日開催は社会人にはやっぱりハードル高いですよきっと(・ω・`) あと…他の街の人も見られるといいなあ。っていうか、私も、他の街でもみたいなあと思いました。

そしてますます、6月8日のGHEEEのアコースティックライブが楽しみです!