練馬交響楽団「春・オーケストラ」

(たまには当日中にアップしてみよう!)
テレビを付けていたら平原綾香さんの『ジュピター』が流れてました。バックがオーケストラバージョンでした。それを聞いていたら、ジュピター、ちゃんと通して聞きたくなって。そしたら、練馬交響楽団の演目にジュピターがあるじゃないですか! で、ウチから徒歩10分の練馬文化センターへ。

今回のは定期演奏会ではなくて企画ものでした。市民オーケストラの企画ものは、大手がやらない/やれないような企画が多くていい感じなのです。しかも当日になってみなければその詳細がよくわからなかったりする玉手箱的要素もあったりします。今回も、「春・オーケストラ」という企画だったのですが、春だったかと言われると、春というよりも…という感じでした。悪い意味じゃなくって良い意味で。もっと企画意図が明確だったような気がします。でもまあ、それを先に宣伝しちゃうと、ぐっとハードルが高くなってしってお客さんがちょっと躊躇してしまうので、春、でよかったのかも。

今回の演目は、指揮者の佐藤寿一さん曰く「英語圏の作曲家」、なんだそうで。前半がUS、後半がUKでした。佐藤さんは、どこの国の作曲家か、というか、どんな言葉を話していた作曲家かというのは、曲に反映されているのではないか、とおっしゃっていました。ドイツ語圏、フランス語圏、チェコ語圏、ああなるほどね、というものがある、と(こういう解説、というかMCが入るのも、市民オケ企画もののよいところだと思います)。

1曲目の、アーロン・コープランド『市民のためのファンファーレ』、最近オリンピック関連番組でよく使われているのを聞いて、ああ通して聞いてみたいなーと思っていたところだったので、通して、しかも生で聞けて感激でした。体育会系の血が騒ぎました(笑)

アーサー・フットの『弦楽合奏のためのエアとガヴォット』。佐藤さんもおっしゃっていましたが、フットの曲、日本ではあんまり演奏されないんですが、アメリカの作曲家なだけにアメリカに居たときはほんとうによく聞いていました。この『エアとガヴォット』も聞いたことがありました。あれはいつだったけなあ、なんて思い出していたら、懐かしい思い出が次々と思い出されて、胸がいっぱいになりました。たぶんあの会場で私が一番この曲に感動していたのではないかなと思います!

ジョージ・ガーシュインラプソディー・イン・ブルー』オーケスラバージョン(グローフェ版)は、ゲストのピアノの青柳晋さんがジョインしてのステージでした。こんな、バリバリなジャズの曲、どう演奏されるのだろう、と思ったら、これがすごくよかったです。ポップ過ぎず、おとなし過ぎず。青柳さんの、自由で伸びのあるピアノがまたステキでした(青柳さん、『展覧会の絵』リリースしてるんだー! 聞いてみたいな)。演奏後、青柳さんと佐藤さんとの短いMCがあり、その際に「古典の曲と現代曲と、弾くときに何か違いはありますか?」と聞かれて、青柳さん曰く「今の時代の曲の方が、楽です」とのことでした。今の時代の曲は、今の呼吸で引ける、今の呼吸は、今を生きているから当然わかるんだけど、古典の曲の生まれたころの呼吸はわからない、だから推測して弾かなきゃいけないからそれが大変だ、とおしゃっていました。ガーシュインについては、ガーシュイン自身がそうとうピアノの弾ける人だったそうで、そのせいかガーシュインの曲は、ピアノの鳴らし方をよく心得た曲だという印象があるそうでうす。力まなくてもピアノが鳴ってくれるんだって。興味深いトークでした。

休憩を挟んで,後半のUK作曲家のトップが、グスタフ・ホルスト組曲『惑星』Op.32より「木星歓喜をもたらす者」。団員のみなさんの気合いが感じられる演奏でした! 今日のお客さん、この曲が目当てって人が多いからってこともあると思うんですけど、素晴らしかったです。『ジュピター』は中間部の主題で、実は私はいちばん最初の主題が好きなんです。ほんと、ジュピターは通して聞いて欲しいです。いい曲なので! 

フレデリック・ディーリアスの幻想序曲『丘を越えてはるかに』No.174、初めて聞きました。序曲で完結していて本編がない、という解説をパンフレットで読んで、興味深々で聞きました。なんかちょっと暗い感じだなーと思ったのですが、中間部のほっとするような主題が美しくて、イギリスって曇りの日が多いって聞いているけど、たまに晴れた空ってこんななのかなーと思いました。

本プログラムの最後はベンジャミン・ブリテンの『青少年のための管弦楽入門パーセルの主題による変奏曲とフーガ」Op.34』。指揮者の語り、という楽器が加わる作品です。英語で聞いたことはあったけど、日本語は初めてでした。佐藤さんの語り、きりりとしてて、小気味良くて良かったです。各パートのみなさんも、パンフレットにもその想いが綴られていましたが、いわば全パートのソロがある曲なので、気合いが入っていて聞きごたえがありました。どの楽器の魅力も存分に感じられました。

アンコールはエルガー『 威風堂々』(卒業式の曲)でした。これがまた完成度が高く素晴らしかったです。アンコールの拍手が鳴り止まず、2、3回とステージに現れた指揮者は、今日初めてマイクを通さずに「ありがとうございます。それでは、エルガー、『 威風堂々』!」と叫び、くるっと楽団員の方を振り、まだ鳴り止まない拍手に被るようにして演奏が始まりました。おおっ、こんなの、市民オケならではなんじゃないかな! ちょっとフォーマルじゃないけどノリでアリ!って感じで。 終りも、演奏が終る前から拍手が入り、最後は観客の拍手と楽曲のフィィナーレが重なって、観客とオケとが一体になった感があって、とてもよかったです。

そして、練馬交響楽団がとてもすばらしい演奏だったことは特に言っておきたい!です。特に特に、弦のみなさんレベルが高い!と思いました。しっかりとカラーのある音でした。練馬交響楽団の弦のカラー。意思が強そうなんだけど独りよがりではない感じ。こんな楽団がある街に住めてラッキーだなと思います。それとやっぱり、生演奏はいいなあ。エンジニアリングを駆使した大御所オケの録音もいいのだけれど、青柳さんのmindを借りて言うのなら、今、この時代に、この街に生きて、私が暮らして呼吸している時と場所と同じ時と場所で暮らして呼吸している人の演奏、っていうのが、さらにいい、と思います。

また、行こうと思います。取り敢えず今日は、iTunesコープランドとフットをダウンロード!だな〜