弟2回企画展 佐藤卓ディレクション「Water」@21_21 Design Sight トーク&ワークショップ「水と書」by 武田双雲

母と、朝イチで『フェルメール「牛乳を注ぐ女」とオランダ風俗画展』@国立新美術館を見に行ってから、お昼を食べに出掛けた東京ミッドタウンで、黒川紀章氏の手の建物を見たので安藤忠雄氏のも見よう、と、21-21 Design Sightに行ってみました。そうしたら、なんと、企画展にちなんだ武田双雲氏のトークショーをやるということで慌てて入館しました。母は趣味で書をやってるのと、田舎のおばさんは滅多にテレビに出ている人をナマで見る機会はないので、とても喜びました。しかし…フライヤーには今日のトークショーのこと書いてなかったのでノーマークでした。もし知っていたら母にワークショップ参加権をゲトするとか考えたんだけどなあ。でも、トークショー、充分堪能しました。

http://milkmaid.jp/
http://www.2121designsight.jp/schedule/water.html
http://www.2121designsight.jp/schedule/water/events.html#takeda

テレビでよく見る武田双雲氏は、寡黙に書を書く人、という印象で、武田双雲氏が何かしゃべっているところは見たことがありませんでした。でも今日は、すごくよくしゃべっていて、しかも聞いていて面白い! 面白さの中に、やはり、何かを極めた人ならではの鋭さというか、光って切れるものがありました。以下、できるだけそのとき武田双雲氏がしゃべっていた感じで、特に私の心に突き刺さった言葉を。


「人が、こう、僕の方を向いて「武田!」「武田!」って、そんなふうに言われるようになっても僕はうれしくないです。僕は、矢沢栄ちゃん(矢沢永吉のこと)みたいになりたいんじゃないんです。って、矢沢さんがきらいとか否定してるわけではないですよ。僕がなんかしたことで、みんなが僕の方を向いて、みんなの矢印が僕の方を向いているみたいなのになるんじゃなくて。それこそ水みたいに。僕はみんなの背後から、水鉄砲を打つみたいにみんなを打つの。打たれた人は、うっ、ずきって感じる。それで僕の方を向いて欲しいんじゃなくって。それで打たれて、押されるというか、動くというか、みんなそれぞの方向に、向いている方向に。そして水はじわっと効いて、やがて消えて行く。そのときに、ああ武田か、とか、あああれは武田だったんだ、みたいな感じで、感じてもらえたら、自分のしたことがそんなふうに働いてくれたら嬉しいです。」


「『いつわり』っていう字は、偽で、にんべんに『〜のため』って書くでしょう、あれ、人の為、だよね。だから、人の為、人の為っていってやることって、偽りなんですよ、自分にウソついているんだと思う。人の為じゃなくて、結局は自分の為、でしょ。だから、やめましょうよって思うの、その人の為っていうの。自分の為でいいじゃないの。まずは一人一人がちゃんと、自分の為をちゃんと実現できていけないと、結局、人にしてあげても、してもらっても、それは成り立たないと思うのです。その上で、じゃあ、人の為に何かしたい、してあげたいっていう自分の為に何かできるのだと思います。」


「立ち向かうのは弱い。単純に、力、とか、そんなものに負けてしまう。だから立ち向かわないで逆らわないで、川みたいに、本流からどんどんどんどん別れて、本流を細らせてしまいえばいいと思います。そうして別れていっても、別れた支流のひとつが、何か引きつけるものがあると、そこに流れは集まっていくんでしょう、やがてそんな支流からまた本流が生まれるのだと思います。」


「器の大きな人になりたいと思います。とにかく器の大きな人になりたいと思うし、そうなれるようにしているつもりです。そして、無駄にって言ってもいいくらい張り切って生きていきたいです。自分の器を満たさないと、人にってところまではまわらないと思う。だから、器の大きな人になって、大きな器を満たしたい。だって大きな器の方が、あふれる量も多いでしょ。あふれるのは、多い方がいいよねえ!」


偶然居合わせたトークショーなのに、私の人生、変わりました。人間はこんなふうに考えることができるんだ! 武田双雲氏、ガタイがでかい人でしたけど、ナカミもでかい人でした。

ワークショップで、参加者さんが書いたものをひょいっとピックしてどんどん言葉を展開してく様は、スリリングでグルーヴ感さえありました。その場でよくそんなぱっと思いついたり展開したりできるな!というほど、どんどん展開していって、ついにはその場にいらした佐藤卓氏や企画書籍のディレクションを行った竹村真一氏までも巻き込んでトークは転がっていってました。普段から、言葉について思慮を巡らせていないと、あそこまでできないんじゃないかなあ。まさにトークライブ!でした。

母は、武田双雲氏の書籍にサインを頂いて、それはもちろん、すばらしい字でした。母の名前の字を見て「…つつましやかな方、ですか?」と軽く降ってくださいました(笑)。母が、全然つつましやかじゃないんです、と話すと、ふむ、と頷いて、すんごくたくましい字で母の名前を書いてくれました。それを見て思わず親子で「わはは!」と声を揃えて笑ってしまいました。それを見て武田双雲氏も「わははは!」と笑って、その顔がとても、大きな愛に溢れている笑顔でした。ああ、こんなふうになりたい、と思いました。

握手をしてもらった手は、大きくてやわらかかったです。


「Water」の展示は、言葉で書くのは野暮というもの。そこに行って、そこかしこにある水に手を浸したり水玉を飛ばしたり、水音に耳をそばだてたりするのがいいと思います。

知っているようで知らなかった水。簡潔に、しかし驚きを持ってその水が水足る所以を見せてくれる展示、佐藤卓氏を始めとするそうそうたる展示者メンバーの作品に「わあー」とはしゃいで、ちょっとうむ、と考えました。そして、私ってやっぱり水好きなんだなあと感じました。水のどこが、と言われると困るくらい…水そのものが、好きなんだと思いました。