犬に本を読む

犬に本を読んであげたことある?

犬に本を読んであげたことある?

朝、本屋に立ち寄ったら、この本を見つけて驚いた。
USに住んでいたころはよく(今でもそうだけど)、新聞の文化欄地域版に目を通し、無料有料問わず「お」と思った催し物には参加していた。私の住んでいた街には、学生新聞の他に「New Times」という、割としっかりとした取材記事を載せているフリーのコミュニティ誌があって、スタバやベーグル屋でよく読んだものだった。

で、その文化欄地域版はこんな感じ。ああもう、これを見ているだけでも懐かしいなあ(泣)MOSTや動物園のイベントが大好きだった。読書クラブとか、ディスカッションとか。

ここに、「Paws to Read」っていうイベントがあるんだけど、これは、子供が犬に本を読んで聞かせる、というもの。こんな感じ

小学校の生徒と関わって私がびっくりしたのは、本や文章がすらすら読めない子が意外と多いってことだった。話すのはもちろん、私よりも全然達者なのだが。すらすら読めない子は、読む事自体がストレスになってしまってなおさら読まなくなり、読めなくなってしまう。小学校の授業の定番に「はい、じゃあ次、○○さん、ここ読んでください」なんてのがあるが、指名されて上手く読めなくてクラスのみんなの笑い者になったりした日には、読む事が子供のトラウマになってしまうこともある。

読書の“効用”は、文章から知識を得る、だけではないのはご承知のとおり。その喜びや楽しみを年少の時に断ってしまうのは悲しいことだ。

「Paws to Read」の犬達は、子供の読み方がどんなにたどたどしくっても、じっとその声に耳をかたむけ、つきあってくれる。決して笑ったり、ばかにしたりしない。子供達は読みを重ねることでだんだんと上手く読めるようになるし、このもの言わぬ聞き手と対話をするようになる。やがて対話の対象は、子供達の成長と共に、本そのものや人間に移っていく。

私は、この活動が大好きだった。かくいう私も愛犬Boをよく宿題のリーディングのお供にした。渡米して間もない頃、翌日授業で発表の際に引用しそうなところをBo相手に読んだものだった。だからヤツは、アメリカの現代文学やら人間機械論やら、教科学習のアルゴリズムやらのことをよく知っていたはずだ。ときどき、Boに、「…だってさ。わかる?」と聞くと、ふむ、とでもいうようにうなずいてみせたり、私のノートを覗き込み訳知り顔でメモを鼻でたどったりしていたものだった。

「Paws to Read」にいつかBoと参加しようと思っていたけど、Boと参加することは、叶わなかった。ヤツには充分その素質があったと思う。地元の図書館では、ベアデッド・コリーやラブラドールが子供たちの声に耳を傾けていたっけ。(それにしても、USの図書館はイベントやら企画やら精力的に活動している。私の住んでいたビレッジの図書館なんて、どこの街にもあるありふれた図書館だったし、本の数はそう多くはなかったけど、いつも賑わっていた印象がある。そうそう、ジム・ロイヤー教授の奥さんがここで働いていた。)

R.E.A.D.は「Paws to Read」の母体であるらしい。こんな地味な活動を日本に紹介した作者の熱意と、これを本にした出版社の心意気に拍手を送りたい。願わくば、この活動が日本でも始まりそして広まることを。