Jamie's Kitchen(ジェイミー・オリヴァーのシェフ・スクール)

mixiで偶然見つけた「ジェイミー・オリヴァー」コミュのおかげで、「Jamie's Kitchen(ジェイミー・オリヴァーのシェフ・スクール)」がWOWOWで放送されることを知って、WOWOWに速攻加入しました。そしたらWOWOWは只今キャンペーン実施中で、2月まで月500円でした。ラッキー!
http://www.wowow.co.jp/extra/jamie/

ジェイミー・オリヴァー(Jamie Oliver)くんのHPはhttp://www.jamieoliver.com/だけど、そのお仕事についてはWOWOWのページがわかりやすいです。
http://www.wowow.co.jp/extra/jamie/about/index.html

近くにクリケット場があるから「クリケッターズ」という名前の両親経営のレストランを手伝い始めたのは、ジェイミーくんが8歳の時だったそうです。その後、イタリアやフランスなどで修行を重ね、イギリスに戻り、20歳のときにロンドンの「リバーカフェ」で働き始めたんだそうです。で、あるとき、そのレストランのドキュメンタリー番組の制作があって、その番組の一部でちょこっとTVに映っただけなのに、その翌朝、ジェイミーくんはプロダクションからスカウトの連絡を受けたのだそうです。

私が、ジェイミーくんをはじめてテレビで見たときの印象は「テレビのお料理番組モディファイドなイケメン・シェフ in UK」って感じでした。番組をいくつか見ていくうちに、この人の天然さと人の良さと兄貴肌っぷりに魅かれました。イギリス英語=フォーマル&丁寧だと思っていた私の固定概念もあっさり覆してくれました(このへんの妙が、字幕やふきかえで表現できていなくて残念なのですが…)。番組を見ていくいちに、この人、ただカオとベシャリだけでここまで来たんじゃないな、と、だんだんと思うようになりました。で、やっぱり、彼はただカオとベシャリだけでここまで来たんじゃなかったようです。彼自身が、彼のステレオタイプから彼自身をパブリックにさらけ出して行く、その“化学反応”を起こしていく過程をフィルムに収めたのが、この「シェフ・スクール」だと思います。
http://www.wowow.co.jp/extra/jamie/school/

「ちょっとそれってステキじゃな〜い?」程度の動機で始めたプロジェクト。それは、15人の職のない若者をジェイミーくんが引き受けて料理を仕込んで、ロンドンでレストランをオープンしよう、というもの。職のない若者は手に職を付け、ジェイミーくんは彼らに感謝され、若者はやがてジェイミーくんの料理DNAを引き継いでシェフとして一人前になってゆく…というのがジェイミーくんのプロットだったのでしょう。

しかし…現実は違いました。オーディションで集められた“助けを必要としていた”15人の若者は、ジェイミーくんの想定外な若者ばかりでした。料理なんてやったことなし、努力や根性なんか無縁、食文化への理解がないどころか無関心、今まで集中して物事にあたったことがない、自分自身に自信がない、不安定な家庭環境…な、若者(だから無職であったわけでもあると思うのです)。ジェイミーくんが今まで接したことがないような若者ばかりです。それでもジェイミーくんはいつものとおり、料理の楽しさや仕事を持つことの喜びを伝えようとがんばります。しかし、そんな彼のピュアな情熱も彼らには通用せず、数人の若者が彼を裏切り、ずるをし、脱落していきさえします。

ジェイミーくん、ショックです。

ジェイミーくんが今まで接してきた人って、基本、ジェイミーくんのことが好きな人・好意的な人だったと思うんだよね。彼らがそうじゃないっていうだけでも、この類いのことはジェイミーくんにとってはじゅうぶんヘヴィーなことだったと思います。

こんな…夢のような企画、最高の環境でトレーニングがしかも最短でできる。もし私だったら、たとえ料理の才能がないとわかったとしても、調理場に寝泊まりしてでも何か、ちょっとでも何かを得ようと食いついていくと思うんだけどなあ。

若者たちのこと、それだけでも大変なのに、レストランの改装工事業者、会計士、役所、などの、本来ならジェイミーくんの味方にある側の人が、次々と彼に「はぁ?」なことをしれっとフってきます。

ジェイミーくん、ボロボロです。

あんなに明るくて陽気だったジェイミーくんが、頭を抱え、いらついてF-wordsを吐き、裏切りに涙し、自分の言葉や思いが通じないことに呆然とする姿がそこにありました。それでもなお、自分を奮い立たせてがんばって無理して(というのが、痛いほどわかる)、人を信じ続け自分を信じ続け、一切の手抜きをすることなく料理に打ち込み、笑顔でジョークをとばずジェイミーくん。

いつしか、笑顔でジョーク、が、なくなってきます。脱落者も半数を超えます。それでも番組は続きます。1期生の若者たちが“卒業”する日まで。

当時の(そしておそらく今の)イギリスが抱える問題、フードビジネスの過酷さ、人を信じることの危うさ、人を育てることの難しさ、が見て取れる、そんな番組です。そして、イギリスの、フードビジネスの、人を信じることの、人を育てることの素晴らしさ大切さも見て取れる、そんな番組です。また、若者たちの成長を追いつつ、実は、ジェイミーくんの成長もカメラは追っています。これが、すごい。この番組は、人が成長していく過程をきっちりとフィルムに収めた作品としてはかなり秀逸ではないかと思います。ヘタな映画なんか見るよりよっぽど感動しますよ! 

ジェイミーくんは、ほんとうにほんとうに、彼らを助けたかったんだと、最終回を見て思いました。それは、テレビで言っていなかったけど、彼自身が難読症のため普通の学校生活を送ることが難しく、学校を中退した経験もあると思います。料理学校に入りなおして、そこから彼の人生が変わった、そのミラクルを彼らの身にも起こしてあげたかったんだと思います。あの若者たちは、そんなジェイミーくんの過去を知っていたのかなあ、知らなかったのかも。タダのセレブ・シェフの気まぐれ慈善活動だと思っていたのかも。

数々の問題を抱えつつジェイミーくんと若者たちはレストラン「フィフティーン」の開店にこぎつけます。そして、このプロジェクトは、「フィフティーン」を軌道に乗せることと、1期生の独立と、2期生の募集のフェーズに移っていきます。ジェイミーくんは、自分がもっと社会に対して、自分が信じる料理というツールと一緒に社会に何かいいことができるんじゃないか、と、「給食革命」というプロジェクトに着手していきます(それはまた別な番組として記録されています)。

今や「フィフティーン」は事前事業となり、このシステム含めて、世界各国に“出展”しているんだって。
http://www.fifteen.net/Pages/default.aspx

これ全部ジェイミーくんが企画したのかなあ。だとしたら、凄いプラン/プロデュース能力だと思います! シェフ辞めても放送作家とかで生きていけるぞ。もし本人企画でかなったら、すばらしいブレインが付いているなあと思います。ジェイミーくんのことをよく解っているブレインが。

TVデビューしたころは紅顔の美少年風だったジェイミーくんの最近の写真、カッコ良くって、おう、成長したなー!と思いました。番組途中から、あの人なつっこい笑顔でケラケラ笑う姿がめっきり少なくなったけど、時々カメラがかろうじて捉えた笑顔は、ゆったりとした温かさと強さがありました。あんな笑顔をナマで見ることができたら…どんな気持ちになれるんだろう。あの笑顔が自分に向けられたものだとしたら…どんな気持ちになるだろう、と思いました。思わず一緒に笑ってしまうかな。それとも、…ほっとして、涙が出てしまうかもしれません。

ますますジェイミーくんのことが好きになってしまいましたよ、私。





それで思い出したのだけれど、な本:
シェフという職業の過酷さについて

調理場という戦場―「コート・ドール」斉須政雄の仕事論 (幻冬舎文庫)

調理場という戦場―「コート・ドール」斉須政雄の仕事論 (幻冬舎文庫)

カフェ、って、オシャレで楽しいことばかりじゃないんだよね

カフェをはじめたくなる本、カフェをやめたくなる本

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