東京ストリート陸上

テレビ、いや新聞だったかな、で聞いたときからずっと楽しみにしていました。
http://d.hatena.ne.jp/gamme/20070426/1177646572

前日、一緒に見に行こうと約束していた友人(元・音楽学科体育専攻、誕生日は10月10日)と、メールで、入念に何時に行ったらいいのか話し合った。その時点では、あんまり人は集まらないんじゃないかなと思っていた。なんだかんだ言って、陸上競技、マイナーだし。なので、むしろ、オレらが行って盛り上げなければ!くらいのことを思っていた(笑)折角の機会なのでフロントローで見たかったので、始発で行く?とか言っていたんだけど、前日設営準備をしていないことから、当日それらが終ってからっていう時間がいいんじゃないか、ということで、8時半くらいに着けるように出掛けることにした。また、どこの場所で観戦するかも話あった(^_^;) どこの場所でどの競技をやるのか、事前に発表になっていなかったので悩んだ。そして、棒高跳びのバーの近く、か、ゴール手前10メートルくらいのところにしようと決めた。棒高跳びを近くで見れる機会なんてほんとないし、ゴール手前10メートルは、そこらへんがトップスピードなハズだから。って、スポーツ見に行くのって、こういうのをgdgd考えるのが楽しいんだよね〜。

当日、カメラ、折りたたみ椅子、ピクニックシート、日よけ帽子、友人は日傘を持参。飲み物とおやつは行きがけに購入。こういう路肩イベントについては、私はNYCやボストンで多数経験済み。用意万端です(^_^)v

予定通りの時間に到着。会場は、ちょうど設営が終了してスタッフさんたちが一段落しているところだった。話し合っていた観戦ポイントを探す。会場に着いてみたら、やっぱり棒高跳びの近いところがいいなあ、と思い、棒高跳びのところへ行ってから、スタッフさんに「50m走のゴールはどこですか?」と聞いたら、なんと棒高跳びのバーのところ、だと言う。なので、条件が2つともばっちりそろう場所を探すことができた! ラッキー! 

私たちも大分早く着いたかなーなんて思っていたけど、もう20人くらいの人が沿道に座って新聞を読んだり写真を撮ったりしていた。私たちも椅子を出して座って待つことにした。

さすがに、アスファルト上を直に走るのは足にも靴にも悪いのでナシだと思っていたんだけど、どうやって解決するのか思いつかなかった。会場に行ってみたら、ゴムマットと敷いて、即席のタータンができていた。2コース分。幅は、私は正式な1コース分の幅を知らないんだけど、みたとこ普通のグラウンドのそれっぽかった。その上の2コースの真ん中が30cmくらい高くなっていて、その上に1コースできていた。セッティングを見ると、どうやらそれが走り幅跳びようのコースらしかった。なんか、ちょっと幅の広い平均台っぽくて、走りにくくないのかなあ、と思った。

コースには、走り高跳びのバーがセッティングしてあった。実際の棒ではなくて、ゴム状のバーが張ってあった。そうか、棒だと、落ちて転がったりって危ないもんねえ。って、本当の試合のときはどうなんだろう。しまった、実は棒高跳びって競技についてよく知らないや…。

ねえねえあれ走りにくくないのかね、わあほんとにバーの高さって信号機よりも高いんだね、なんて友人と言っていたら、とことことやってきた、ひと目でアスリートとわかる体躯のおにーさんが、ひょいっとコースに乗って、とっとっとっ、と走りだした。黒いノースリーブ、黒いタイトなハーフパンツ、長めの髪、日に焼けた肌。ちょっとwebにあった写真とイメージ違うけど、有木選手(棒高跳び)だった。まだ30人前後しかいいないギャラリーは黙ったまま。スタッフさんたちは気に留めていない風に働いている。そんなちょっとざわつく中、有木選手はジョグを終えて、コース上で歩調を始めた。目の前を何度も何度も有木選手が通りすぎていく。えーマジですかー( ゜Д゜)

ウォーミングアップは走るだけかなと思ったら、ポールを手にしてのウォーミングアップもし始めた。ポールに軽くぽーんと体を預けたり、バーの下をそのまま駆け抜けたり。そのまま見ていたら、やがてなんと、そのままバーを飛んでしまうじゃないの! なんかそれがすごく自然で。えっ、と思ったときには、もう、有木選手の体が宙に舞っていた。ぽすん、とマットの上に落ちる有木選手。予想していなかっただけに、まだまばらなギャラリー、スタッフ、そこにいた報道の人は「わあああ!」と声を上げて、顔を見合わせて一斉に拍手した。有木選手、マットから起き上がると、照れくさそうに手を振ってくれました。

そして気が付いて視線を50m走のスタートの方に映したら、為末選手や朝原選手、菅野選手もウォーミングアップを始めているじゃないですか!すぐ目と鼻の先で!

うわあすっげえ筋肉! あんなところに筋肉付くのかよ! でも横から見ると体薄い! ちょっとした動きにも無駄がないよ! なんかみなさん、生き生きしている人間、っていう感じ。もうね、福眼福眼とか言っているバヤイじゃなかったです。人間として、選手のみなさんの方が、体を大切にしている、と思いました。その機能をフルに使っている! コンディション維持もメンテもちゃんと行き届いているって感じる! …エンジニアの性か(笑)もう、自分の腹だの二の腕だのの突っついてみては己の日頃の不摂生さを呪うばかり(^_^;)

それにしても、見てて思ったことは、トップアスリートもウチら普通の人と同じよーなウォーミングアップするんだなー、ということ。軽いジョッグ、モモ上げ、ちょっとダッシュ、骨盤をほぐしたり、などなど。ほんと陸上ってシンプルだよなーと思いました。ただし、選手の皆さんは、ちょっと走るにしてもめちゃくちゃ速かった!です。ウチらの全力疾走よりも、全然、速い。そして、その動きのひとつひとつが緩やかで、繋がっていて、きれい。狙ってやっているんじゃないってことは見てて充分判るのだけれど、なんか、能の動きとか、そんなふうに感じました。

そんなの、見ていて、友だちとわあわあ言ったり、今日ここに来れなかった人にメール出してこの凄さを伝えたりとかしていたので、待っている間、全然、飽きなかったです。開会式リハーサルや大会の演目流しとかも見れたので、当日のスケジュールも把握できたし。テレビとか新聞記者とかにちょこっとインタビューを受けたりもしました(^_^;)

やがて開催。で、気が付くと、沿道はすごい人、人、人! びっくりしました。いつの間に?!っていうくらい、あちこちから人が集まってきて、沿道をびっしりと埋め尽くしていた。

最初はキッズの50m大会。沿道をびっしり埋めるギャラリーの中を走るなんて、よい機会を得られたねえ! へえ、学校の陸上部とかじゃなくて、杉並区とか、陸上クラブチームみたいなのがあるんだー。みんなちゃんとスパイク履いて走っていた。ゴールからスタート地点へ戻る時、「がんばったねえ!」って声をかけて拍手をすると、とっても照れくさそうにしてくれるのが、かわいかったです。決勝へは、大会の選手宣誓をした男の子と、一番年上っぽく見えた女の子が進んだ。この2人が、為末選手と朝原選手と走る。

それから、まず棒高跳びのエキシビジョンが行われた。朝のゲネプロでの指示通り、スタッフさんたちはちゃきちゃきと棒高跳びのコースとマットやバーを設置。大会が始まってから来たギャラリーは、その設置された光景におおっと感嘆の声をあげていた。丸の内の路上に、バー出現、ですもん。有り得ない。有り得ないといえば、コース脇とマットの周り、手が届きそうなほど近くにびっしり集まったギャラリーと報道陣。ほんとの大会だっだったら、これも有り得ない。すごい試みだなと思いました。

朝の、牧歌的なウォーミングアップのときと違って、本番はギャラリーいっぱいだし報道陣もいっぱいで、有木選手は楽しみつつもちょっと戸惑っていたふう。周りはざわざわうるさいし。でも、きっちりと集中して、最終のウォーミングアップをして、ポールを手にして、本番。

ウォーミングアップとは比較にならないくらいの迫力とスピードで、ビルの谷間、街路樹の緑を背に、信号の前を、飛びましたよ、人間が。

最後にポールの反発を利用してぐっと飛ぶのね。ポールは力強く跳ね戻るのに、人間は、ふわっと宙を舞うの。舞う、という言葉がぴったりなほど美しかった。

地割れのように響くギャラリーの感嘆の声。波のようにビルの谷間からわき上がる拍手。それに応える様に(ほんとはそういうキャラじゃないかもしれないけど)ガッツポーズをする有木選手。このリアルには、どんなドラマもかなわないだろうな...!

バーの高さを高くして、記録に挑戦。有木選手はそれを難なくクリアー。ストリート陸上記録、ってことみたいなんだけど、記録更新うんぬんよりももう、マジでマジに挑む人間の姿っていうものだけで、お腹いっぱいでした。

続いて、朝原選手、菅野選手の50m走。その迫力たるや、すごかった。一歩で進む距離が全然違う! もっと驚いたことは、あんなに力漲るフォームなのに、走るときの音が全然しないってこと! ほんとうに風のように目の前を走りさっていきました。きっと、全ての力は前へ進む為に使われているんだ、だから踏み込む音がしないんだ、と思った。目の前をすっごいエネルギーと風が、音を立てずに通り過ぎていく。これも人間なのか、と思った。人間ってこんなことができるのか?! 

スタート地点から、「わーっ!」っていう人の声が、選手が走ってくるのと一緒に波になって近づいてくる…声のウェイブ。こんな一体感、っていうか、参加している感、っていうのも、始めてでした。

為末選手に至っては、もう、動きが人間じゃない他の動物のようだった! 丸の内の街路樹の間を、たった3歩で駆け抜けて行く! 手でよいしょっと乗り越えるんでなきゃひとつだってまともに超えられそうにない高さのハードルを、連続して、越えて行く。ジャンプするために踏み込んだ瞬間に、かすかにタッっと音がするけれど、私が歩いているときに靴でこつこついう音よりもずっと小さな、地面をなでるような音しかしなかった。スパイクはいて、タータン上を走っているというのに! 超える瞬間は、マンガの絵みたいに、足とか腕とかがぐにゅううんと伸びているんじゃないかっていう錯覚すら覚えた。

すごかった。マジすごかった。ほんとスゴかった。

エキシビジョンの後、先ほどのキッズとのマッチがあった。ハンデ有り戦。緊張して謙遜しているキッズの中に、子供らしい「でも頑張るぞ!」という鼻息が見られて、さわやかに微笑ましかった。結果は、為末選手、朝原選手の勝ち、だったけど。当たり前か(^_^;) でも、かなり本気モードの両選手に追い抜かれた、なんて、めちゃくちゃ貴重な体験だと思う。見ているこちらも、いい体験をしたなーと思った。

今度生まれ変わったら陸上やろう!と友人と誓い合いながら丸の内を後にした(バカ)。

(後日加筆)

大会の運営の不備を非難するブログをあちこちで目にした。全てのお客さん・オーディエンスが満足するイベントなんて有り得ないので、しょうがないことだなと思う。まあ、大概、よかった〜と思っている人よりも不平不満を言いたい人の方がしっかり書き残す傾向があるし、そういう意見の方が目に付いちゃうよね。大会主催者も、あんなに人が集まるなんて思っていかなったんじゃないかな。少なくとも私は思っていかなった。すごいいい試みなのに盛り上がらなかったら為末さんがかわいそう、だからウチらが行かなくちゃ、くらいに思っていましたもん(^_^;)。

「立ち止まらないでください!」っていう声は、確かにうるさくて、選手のみなさんが集中できないのではと思ったくらいうるさかった。しかし、係の人も、「道路に人が流れないと怒られるから、言え!」って言われていたんだろうな。もう全然、人が流れていないふうだったから。でもあの状況じゃ、止まるなって言われても止まっちゃうよ、だって見たいもの。言うだけ無駄だったと思う、ので、だったら言わなければよかったのに、と思った。(ああゆうのは、道路の出入り口で調整しないとダメです。)

"あちら側"の目線で考えると、もっと予算があれば、観客席を設置するとか(後日修正:道路の幅を考えると、消防法上無理とのこと)(せめて、道路沿い最前列に1列でいからイスを用意するとかできたらよかったと思う。これなら30万円ほどでちょっと解決できた)、もっと広いところでやるとか(しかし、そうなるとほんとに炎天下での開催となってしまっただろうな)、考えることができたのだろうけど、あれがけっこう、ぎりぎりだったように思う。現時点で1千万円じゃ足りていないと思います。主催者側としては、「ひゃあ人来過ぎちゃったよ〜」くらいが"費用対効果"としては望ましいので、ある意味、狙い通りだったのではないかと思います。っていうか、ほんとマジで来過ぎちゃったんだろうなあ〜。

私は、100%、楽しみましたよ〜。楽しかったです。

その日の夜とか、後日、テレビで報道されているのを見たけど、残念ながら私の感じた迫力は画面からは伝わってこなかった。こんなもんじゃないんだから! もっともっとスゴかったんだから! ほんとに!