"BRAVIOL(ブラビオール)"製作秘話

http://www.yamaha.co.jp/takumi/violin/violin01.html

名器の復刻版を製作するというリーバース・エンジニアリング。中でもヴァイオリンは難しいとされています。それに挑んだヤマハのエンジニアのお話。

  • "BRAVIOL(ブラビオール)"は、ガルネリ・デル・ジェスのバイオリンの復刻ということなんでしょうか?

いえ、復刻ということではありません。現代のバイオリンを作る条件。例えば木の材料、ニス、弦などは、昔のものとは異なっています。仮に同じ材料を揃え、全く同じバイオリンを作ろうとしても、同じ音の出るバイオリンを作ることはできません。

我々が試みたのは、"ガルネリ・デル・ジェスの思想"を活かそう、ということでした。ガルネリ・デル・ジェスは、どういう楽器を作りたかったのか?その事を考えながら、まったく新しいバイオリンを作ろうとしたのです。

そこには、とても勤勉でとても謙虚でとても挑戦的なエンジニアの姿がありました。

  • では、どうしてバイオリンを手がけることになったんですか?

先ほど申し上げたとおり、バイオリンを製作することは、ヤマハの、いわば宿願であったわけです。そして、その夢を可能にしてくれたのは、コンピュータによる新しい技術、デジタル解析でした。

バイオリン製作特有の"個人の技術"。かつて、これを再現するには、その技術を持った職人さんの腕しかなかった。我々は、その"個人の技術"の再現に、コンピュータを使うことを考えました。

「ガルネリ・デル・ジェス」というバイオリンがあります。開発はこのバイオリンをデジタル解析するところからはじまりました。「ガルネリ・デル・ジェス」が持つ厚みや形状といったデータを収集し、コンピュータへ入力、解析を繰り返したんです。

そして、そこから得たデータで胴体の形状を、ヤマハの持つ最新技術で再現することに成功しました。

でもこれは、ヤマハがもともと持っている、楽器製造の高い技術力、具体的に言えば、木工技術の専門家、塗装技術の専門家、品質を維持する生産技術の専門家、そうした優れたノウハウを持ったスペシャリストたちの存在と彼らのチームワークがあったからこそ、うまくいったんですね。

ヤマハが100年以上に渡って培ってきた、木を扱う技術と、コンピュータっていうまったく新しい技術の融合が、この"BRAVIOL(ブラビオール)"を産んだ、と言っていいと思います。

「ものづくり」の根底にあるもののひとつが人そのものであることを忘れてはならないと思いました。

このヴァイオリンを弾いてみたいと思いました。