印刷解体 Vol.3 LAST!

渋谷のParco Part1地下Logos Galleryで開催されている、「印刷解体 Vol.3 LAST!」に行ってきた。

印刷解体 Vol.3 LAST!
会場:渋谷Parco Part1地下1階 Logos Gallery
期間:2006/09/29(FRI) - 2006/10/16(MON) 10:00am - 9:00pm
入場料:無料
企画:株式会社パルコ+日月堂

昨年、一昨年とロゴスギャラリーで開催し、好評を博した「印刷解体」を今年も開催いたします。
三度目となる本年は、これまで最もお客様のご要望の高かった活字のバラ売りに徹し、特に来調整が高く、入手を希望される方の多い「欧文活字」について各種書体・サイズを揃え、これまでにない規模で放出いたします。また、「和文活字」も文字の種類が揃っている初!放出品を多数ご用意いたしました。さらに、昨年、予約段階で定員に達した活版印刷による名刺フルオーダー受注会も引き続き開催いたします。
失われつつある活版印刷について、活版印刷にまつわるモノを通してその魅力を伝えられないかという目的も、一定の成果を収めたものと考え、「印刷解体」も今年で一区切りすることとなりました。活字を見て触れて自由に選び、一本からでも買える貴重な機会も、これが最後となります。

私は、活版印刷から電子写植への移行期に読書に親しんだ世代だ。活版印刷の文庫本の、コマコマっとした字の味がなんとも言えず良く、私はときどき、ページを開いたときに、字を追うのを忘れてその字の並びを楽しんだりしたものだ。

去年の「印刷解体」、なんだかんだいってて行けなくて、今年はと思っていたら今年が最後とは…。日曜日の午後、ごちゃまんと人が溢れる渋谷のその人ごみをかき分けてLogos Galleryへ。

ギャラリーに近づくと、インクのにおいが漂ってきた。音こそはしなかったものの、昔実家の近くにあった、地方新聞の印刷所のにおいと同じだと思った。壁に這った木の棚にずらっと活字が並んでいて、みなさん手に小さな木箱を持って、ピンセットで活字を拾っていた。そうそう、この作業を体験せねば!と、私も木箱を手に取り、まずは和文活字で自分の名字名前を探すことに。ところが、うーん、この展示会に来るのが遅かったからだろうか、自分の名前の漢字は「子」ぐらいしか残っていなかった。自分の名前の漢字はあきらめて、自分のメールアドレスを探すことにした。一番短いメールアドレスの活版印刷を作ろう、と。まあなんでもよかったのだけれど、ある意味のある文なり単語なりの活字を探したかったのだ。探し始めて、はたと気がついて棚を見てみると、やっぱり…「@」がない(^_^;) 活版印刷のころは@なんてなかったんだね〜。「‘at’」で代用することにした。

それから、アンプを作ったときに刻印に使うように、ちょっと大きめの活字でiとoを求めた。

欧文活字は比較的探しやすかったけど、和文活字は、漢字なんて逆になっちゃうともうよく解らなくて、探すのに苦労した。と、私の右手で活字を拾っていた70代くらいのおじいさんは、ひょいひょいと拾っているじゃあーりませんか。元業界の方かな…慣れると普通にできるのね。

家に帰って来てから、活字をメールアドレスに並べ直して、くるくるっとテープで巻いて固定して、インクをつけて名刺に押してみた。間の文字にインクが付かなくて、何度か失敗をしたけれど、5回目くらいからコツを掴んでキレイに印刷できるようになった。そうして、こつこつと、名刺10枚分くらい印刷した。

今日私が体験した作業と、今私が体験しているこの密やかな喜びは、この世からなくなろうとしているのだ…と思うと、採算が合わないとか効率が悪いとかなんとか、あると思うけど、どうか今後も、生き残って欲しいなと思わずにはいられなかった。そうだ、「キッザニア90s」とか作ればいーんだよ!そして、失われた/失われつつある仕事や職業が体験できる、っていうのは、どうかな? 活版印刷の他にも、
・畳屋さんとか織物屋さん
・量り売りのお酒、醤油、味噌屋さん
・刃物研ぎ屋さん
などの体験ができるとすばらしいと思った。

そうそう、この展示会のポストカード大のチラシ、活版印刷で印刷されたものだった。チラシコーナーに並べられていたそのチラシは、他のカラフルなチラシの間にあって逆に人目を引いた。文字が目に飛び込んでくる、というか。

展示とは関係ないが、parco-art.com以下は、古い展示会をアーカイブ化しようという気はないのかしら? 会期が終るとさっさとその展示に関わるディレクトリ以下を見れなくしてしまう。見れなくすることで何か良い事があるのかって思うくらい。「印刷解体 Vol.3 LAST!」については以下にあったのですが、現在はForbiddenになっちゃってます。

http://www.parco-art.com/web/logos/insatsukaitai_3/