NHKハイビジョン特集「宇宙船ウェイクアップコール〜21世紀の飛行士は何を感じたのか〜」

人が成し得る行いの中で私が最も好きなことのひとつが「ウェイクアップコール」。

そもそも、誰かに朝いちばんで「おはよう、起きて!」って言うことってとても幸せなことだと思うのです、言う方も、言われた方も。で、直接「おはよう、起きて!」って言えないくらい遠くにいる人を起こしてあげたい、という、切なくもしかしできたらなんてハッピーなことだろう!ということを、ちょっとテクノロジーを使って解決しました、っていうのが「ウェイクアップコール」だと思うのです。そしていつからか、演出として音楽をかけるっていう仕様ができて。たぶんラジオ番組のスタイルが影響したのだと思うのですが。

電話のコールが聞こえる。寝ぼけつつも受話器を取る。すると音楽が流れてきて「おはよう」という声が耳に飛びこんでくる。…いいなあ、いいよね(泣)

かのNASAは、この素晴らしき行いを、宇宙船で働くクルーに「今日」が始まったことを伝える手段として採用しているのだそうです。宇宙では、宇宙標準時がないから、地球のを使うしかないからね(^_^;)。しかしお茶目じゃないですか!>NASA。そんなNASAのウェイクアップコールにまつわるエトセトラのドキュメンタリー番組でした。

9/30 19:00〜20:30
NHK BS-hi
ハイビジョン特集「宇宙船ウェイクアップコール〜21世紀の飛行士は何を感じたのか〜」


伝統の始まりは、1972年、アポロ17号が月を目指したとき。アポロ計画の千秋楽です。地球を離れて4日目、宇宙船が月の周回軌道に乗った朝、人類初の宇宙でのウェイクアップコールはJhon Denverの「The City of New Orleans」だったそうです。Good morning, America, how are you?のくだりがポイントだった模様(笑)。月面着陸の朝はワーグナーの「ワルキューレの騎行」。月を離れる朝はカーペンターズの「We're only Just Begun」←歌詞的になんてハマっている選曲なんでしょ(T_T)!

曲は、宇宙飛行士が自ら選曲することもあるし、宇宙飛行士の家族が選曲することもあるし、NASAのコントロールセンターの人が選曲することもあるみたい。それぞれの曲にそれぞれの理由があるのです。それってウェイクアップコールが、ただのチャイムとかアラーム音ではなくって音楽だったからできたことだなあと思いました。そして、その音楽を、毎回変えられるようにしたNASAのお茶目さっていうか遊び心も素晴らしいなあ、と。どんなに過酷なミッションでもテンパってるミッションでも、余裕を忘れない、心を込めることを忘れない。

知らなかったのは、1996年に火星に辿り着いた無人探査機Mars Pathfinerクンや、2004年に続いて火星に降り立ち今も火星を探査し続けているSpiritクン、Opportunityクンにもウェイクアップコールが行われているということ。人ではないロボットなローバーにもコールを送るそのお茶目さがナイス!です。Spiritクン、Opportunityクンにはちゃんと別々な曲が送られているんだって。芸が細かい(笑)! そして、その選曲がまたニクい。Spiritクンのコントロール・システムが壊れたときは、ABBAの「S.O.S.」だったとか(^_^;)

そしてこのウェイクアップコールのことが世につとに知られるきっかけとなった、2003年爆発したコロンビア(STS-107)の飛行士、イーラン・ラモン氏の奥さんが選んだウェイクアップコールのことが、かなりメインで取り上げられていました。あの歌詞、あの曲を選んだのは偶然だったらしいのですが、改めて聞いても、あまりにもできすぎた運命のいたずらだなとおもいました…。しかし、亡くなった宇宙飛行士さんに最期の時があったのなら(即死でなかったのなら)、きっとこの曲を思い出していただろうな、と思います、そしてどんなにか心強い思いで旅立っていっただろうな、と思います。音楽とはそういうものだと、思います。

自分がUSにいたときには、シャトルがミッション中のときには、ケーブルテレビでシャトルと管制センターとのやりとりをブロードキャストしているのを放送しているのを、よく部屋でテレビつけっばなしにして見ていました。なので、わりとほとんどのウェイクアップコールを聞いています。結構選曲のセンスがいいんだよなあ。人生でそうある体験じゃない宇宙でのウェイクアップコールにどの曲を選ぶか、みんなほんとに悩んだと思うよ!

番組には、日本人宇宙飛行士の選んだウェイクアップコールのストーリーもありました。日本人初船外活動を行った、2005年に宇宙に行った野口さんのウェイクアップコールは、となりのトトロのテーマ曲「さんぽ」、しかもヒューストン日本人学校の子供達の合唱バージョン。野口さんのお子さんも歌っているもので、とてもかわいいの〜。「あっるこー、あーるこー、わたしわあげんきいー♪」が宇宙船に鳴り響いてましたよ。SMAPの「世界にひとつだけの花」は、野口さんも船内に持ち込んだキーボードで演奏していました。

若田さんが2000年に2度目に宇宙に行った際(STS-92)には、甲子園のテーマ「栄冠は君に輝く」が、毛利さんが2000年に2度目に宇宙に行った際(STS-99)には、銀河鉄道999のテーマ(ゴダイゴの)が流れて、この2つは私もリアルタイムで聞いていました。銀河鉄道999のテーマは、私も好きな曲なので、いやあ、鳥肌モノでした。あの後、自分がちょこっとDJするとき銀河鉄道999のテーマをかけると、エラい盛り上がりました(^_^)/

ちょっと調べてみたら、なんと、スペースシャトルのミッションで使われたウェイクアップコールはアーカイブ化されていていました! 例えば:

http://spaceflight.nasa.gov/gallery/audio/shuttle/sts-100/html/ndxpage1.html

sts-XXXはミッション名。ここにsts-97とか入れると、そのときのウェイクアップコールのアーカイブが見れます。このフォーマットになっていないものは、ギャラリーのページからAudioファイルをピックして探すことができます。あ、毛利さんのウェイクアップコール発見!:

http://spaceflight.nasa.gov/gallery/audio/shuttle/sts-99/wave/blue_fd04.wav

曲だけではなくて、その後どんな会話が管制センターと宇宙飛行士の間で交わされたかも記録されていて、もう、とてもヒューマンなのです。

2007年8月までのウェイクアップコール曲目リストはpdfファイルになっています:

http://history.nasa.gov/wakeup%20calls.pdf

Spiritクン、Opportunityクンは今も火星にいるので、今も毎日ウェイクアップコールが行われているのです。初代Pathfinerクンにウェイクアップコールを送ったときはジョークで始めたみたいですけど、今やそれもれっきとした「伝統」になっているもようです。

私だったら、宇宙から、どの曲聞きたいかなあ。っていうか…誰に起こして欲しいかな…。



http://www.nasa.gov/vision/space/features/wakeup_calls_prt.htm